(社説)2008年の回顧
┏━━2008年の回顧━━━━━━━━━━
31日;毎日社説(全)08年を振り返る 国家のきしみが聞こえる
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20081231k0000m070095000c.html
『 日本という国のシステムがあちこちできしんでいる。ネジの締め直しや部品交換では済まず、船体の大幅改修やかじ取りらの交代も検討せざるを得まい。
◇静かな「一揆」◇まずは政治である。海図を失った船のようにとにかく浮かんでいる格好だろう。庶民から見れば漂流とも迷走とも映る。自民党は何がおかしくなったのか。作家の塩野七生氏によると、もっぱら自民党が首相を決めてきた日本と「執政官は元老院が決める」とした共和政全盛期の古代ローマはよく似ている。こうした少数指導体制は成長期には機能するが、環境が変わると人材活用のメカニズムが狂う。「自分ではうまくやっているつもりなのに、それがかえって足を引っ張る結果になってしまう」(「ローマから日本が見える」)という指摘は興味深い。日本は、古代ローマのような衰退を経験しているのだろうか。
数々の不祥事を抱える社会保険庁では年金記録の組織的改ざんが発覚し、国家機能の「腐食」は目を覆わんばかりになった。庶民感情を逆なでした点では、新しい医療制度もそうだ。「後期高齢者」という言葉などに対するお年寄りの反発は、静かな「一揆」ともいえるものだった。草の根的な「一揆」は他の分野でも起きた。頻発する非正規雇用労働者らのデモは、労働運動が低調な日本にあって、精いっぱいの抵抗ともいえよう。
田母神俊雄航空幕僚長の論文問題は、日本の文民統制(シビリアンコントロール)に重大な懸念を抱かせた。田母神氏がいくら「表現の自由」を主張しようと、五百旗頭真・防衛大学校長が言うように個人の思想信条の自由と、職責に伴う義務とは別問題だ。国家の意思として兵員・装備を最終的に動かす制服組幹部が、政府方針に公然と異を唱えるようでは国が危うい。現実の日本の安全保障も悪化した。米ブッシュ政権は北朝鮮の核問題を解決できない上、北朝鮮へのテロ支援国家指定も解除した。日本への直接的な脅威(核兵器とミサイル)は手つかずで残り、拉致問題も進展しない。そんな危うい現状を多くの日本人が十分認識しているとは言い難い。
◇日本ミッシング◇ 中国が五輪開催などで存在感を増したのに対し、日本の存在感が薄れたことは否めない。米国を中心に「ジャパン・ナッシング(無視)」や「ミッシング(行方不明)」などの言葉が飛び交い、日本側も小泉政権時の「世界の中の日米同盟」といった言葉をとんと使わなくなった。
ケネディ大統領の特別補佐官を務めたアーサー・シュレジンジャー氏はブッシュ時代について「アメリカが海外でこれほど不評であったことはかつてなかったし(中略)これほど信頼を欠き、恐れられ、憎まれたこともなかった」(「アメリカ大統領と戦争」)と酷評する。だが、日本がイラク戦争をいち早く支持したことを忘れてはならない。ブッシュ時代の終わりに日本が何の総括もしないなら、それこそ国家的なモラルハザードと言うべきである。
30日;日経社説(全) あまりにも激しい経済環境変化の1年
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/index20081229AS1K2600B29122008.html
『米国を震源とする金融危機は世界のすべての市場に甚大な影響を及ぼし、急速な景気冷え込みは雇用問題の深刻化を伴いながら年を越す。
●空前の幅で相場が変動● 高騰し急落した原油相場は、経済激変の年の象徴ともいえる。昨年夏に米国のサブプライムローン問題が噴き出すまで、世界の経済情勢は「資源高騰下の同時好況」と呼ばれていた。その後、今年夏までは「景気減速とインフレの同時進行」が焦点だった。秋以降は日ごとに世界不況の様相が深まり、デフレ色も強まっている。短期間に経済環境がこれほど大きく変わり続けたことが、かつてあっただろうか。
9月に米投資銀行リーマン・ブラザーズが破綻した衝撃は、とりわけ大きかった。実体経済に比べ膨張しすぎていたマネーの経済が猛烈な勢いでしぼみ始め、株式からも商品相場からも新興市場国からも、投資資金が一気に引き揚げて、主要国の国債やキャッシュに逃避した。米欧などで短期資金市場や社債の発行市場が一時、機能マヒ状態に陥った。
各国政府、中央銀行は国内金融機関への公的資金の注入を急ぎ、利下げや市場への緊急の資金供給など、対応に追われた。米連邦準備理事会(FRB)が12月に政策金利の誘導目標を実質ゼロまで引き下げ、量的緩和政策に踏み込んだことは、信用収縮の深刻さを端的に示す。
前年度に2兆円を超える連結営業利益を計上したばかりのトヨタ自動車が今年度は赤字に転落する見通しになり、衝撃が走った。関連産業のすそ野が広い自動車メーカーの苦境は、来年にかけて景気と雇用により大きな影響を広げていく。日本では、年の瀬になって自動車メーカーなどを中心に非正規労働者の雇用を減らす動きが相次いだ。景気と雇用情勢の悪化が急速に進んでいるのに、政治の対応は後手に回った。麻生首相の支持率が短期間で急速に低下した最大の理由も、「政局より政策」と言いながら今年度第2次補正予算の提出を来年に先送りしたことだった。
●枠組み見直しの契機に● 麻生首相は年明け後の通常国会に提出する2次補正予算案と来年度予算案を「生活防衛のための大胆な実行予算」と呼び、世界で最初に不況から脱出することを目指すという。主要国が相次いで財政出動を拡大する中で日本の財政措置の規模も大きい。だが、定額給付金など効果が疑問視される政策もあるし、衆参ねじれ国会で審議が長引けば、政策対応はさらに遅れる。衆院選挙がいつごろになるかも含め、政治の展望は不透明なまま新年を迎える。米国ではオバマ次期大統領が経済政策担当者をいち早く任命、1月の就任後2年間に300万人の雇用を創出する目標を掲げた。潤沢な資金を抱え、経済成長率も高い新興国抜きでは世界的な危機への対応が難しくなった国際経済力学の変化を示す。今回の金融危機が、第二次大戦後に続いてきたドルを基軸通貨とし、米国のパワーに依存した世界経済の枠組みを、見直す契機になりつつあることも、認識すべきだろう。
30日;産経社説(全) 回顧2008 「変」の先に灯りともせ 安全網の再構築が問われる
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/081230/stt0812300307000-n1.htm
『今年の漢字に「変」が選ばれた。変には「かわる」「うつりかわる」「ふつうではない」といった意味がある。
≪米欧金融危機が急波及≫ 米国発の金融危機は9月の米大手証券リーマン・ブラザーズの破綻以後、実体経済を急激に悪化させた。輸出不振と円高、資金繰りの悪化は企業を直撃し、今年3月期決算で2兆円超の営業利益を上げたトヨタでさえ、来年3月期は営業赤字が確実な見通しだ。こうした企業の経営環境の悪化はすぐに生産、投資の抑制につながり、雇用情勢に響いた。雇用の悪化は、非正規社員をめぐる安全網の不備を浮き彫りにした。今や雇用者の3人に1人が非正規社員だ。年の瀬なのに、ハローワークには失業者が列をなす。雇用の安全網の再構築と雇用制度全体の見直しが緊急の課題である。
≪根深い政治不全の構図≫ しかし、こうした安全網を期待する国民の声に対して政治はあまりにも力不足ではないか。与野党とも政策論議そっちのけで、解散・総選挙に向けた土俵をいかに有利につくるかに党利党略をめぐらすばかりである。政局の変化を自らつくろうとした福田康夫前首相も政治の混迷に拍車をかけた。後を継いだ麻生太郎首相は景気悪化で解散のタイミングを失い、与党が参院で主導権を握れない「ねじれ国会」で苦悩する構図が続いている。
米国民は、「チェンジ」(変化)をスローガンに掲げたオバマ氏を大統領として選び、経済の立て直しを託した。オバマ氏の勝利は、金融危機によってもたらされたといってもいいだろう。新政権に期待されるのは、景気浮揚に向けた政策総動員である。日本も取り巻く状況は同じであろう。年明け早々、雇用対策を含む第2次補正予算案や来年度予算案の審議が始まる。政争に明け暮れる暇はないはずである。国際情勢をめぐる変化も気がかりだ。イラクの復興支援活動に当たっていた航空自衛隊は撤収したものの、インド洋での海上自衛隊による米軍などの艦船に対する給油・給水活動は来年7月まで半年間延長されることになった。ソマリア沖の海賊対策のため、自衛隊派遣の検討も始まった。日本は来年、国連安全保障理事会の非常任理事国になる。今後、アフガニスタンへの復興支援について米国など国際社会から協力要請が強まるとみられる。重病説も伝えられる北朝鮮の金正日総書記の動向と拉致・核開発問題では微妙な変化も見逃してはなるまい。
こうした内外の山積する課題に解を見つけていくのが政治の役割である。変化の先に希望の灯りをともすのは政治の責任だということを改めて認識してほしい。
| 固定リンク


最近のコメント