【社説】日中首脳会談の意義
日中首脳会談
6年半ぶりに日中首脳の相互訪問が再開された。東京での会談で、2人の首相は口々に関係修復への積極的な言葉を連ねた。ハイレベル経済対話の開始、環境やエネルギー分野での協力強化などで合意した。とりわけ地球温暖化対策で日中両国がポスト京都議定書となる「2013年以降の実効的な枠組みの構築に関する過程に積極的に参加する」との決意を公式に打ち出したことは会談の成果として、歓迎したい。
だが、日中関係を共通の戦略的利益に立脚した「戦略的互恵関係」へと発展させていく上で、なお大きな課題があることも明らかになった。共同プレス発表」には、経済を中心とする沢山のテーマが盛り込まれたが、政治的な懸案は足踏みしたまま、多くは先送りされた。発表文の調整が、最後まで難航したのも、政治問題がネックになったとみられている。
12日;産経社説(2)日中首脳会談 互恵の道筋をより明確に http://www.sankei.co.jp/ronsetsu/shucho/070412/shc070412000.htm
『会談後の共同プレス発表に、北朝鮮による拉致事件を「人道主義的関心」という表現で盛り込んだ。日本の国連安全保障理事会常任理事国入りについても、中国側は「日本が国際社会で一層大きな建設的役割を果たすことを望む」と一定の理解を示した。
こうした中で、「互恵」関係の行方を占う象徴的な問題として注目されたのは、両国の資源開発をめぐる利害が対立する東シナ海の石油ガス田開発だった。昨年の訪中では「東シナ海を平和・協力・友好の海とするため対話と協議を堅持」することが共同プレス発表に盛り込まれた。しかし、政府間協議は平成16年以来、すでに7回行われたが、解決の糸口は見えていない。その間、中国側は17年に日中中間線付近にある白樺ガス田(中国名・春暁)と中国浙江省間の海洋パイプラインを完成させた。昨年の安倍首相訪中直後の11月には、採掘施設「八角亭」のやぐらで炎が確認された。試掘あるいは生産に向けた活動とみられ、政府は中国側に抗議したが、中国側は「正当な開発活動」と反論している。平和の海」といって握手をしたあとでも、中国側は着々と開発を進めてきた。中国側の基本的な姿勢に変化が生じるのかどうかはまだ分からない。
今後は中国国防相の来日などを通じた防衛交流も進展するだろう。安全保障面での信頼醸成は不測の事態の防止に有意義だが、中国海軍の艦船は自国の権益を誇示するようにガス田開発地域にも出没している。こうした行動が続く限り中国の脅威は消えないし、互恵の実も見えてはこないだろう。
12日;読売社説(1)日中首脳会談 「政」でもたつく戦略的互恵関係
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20070411ig90.htm
『日中両国の「戦略的互恵関係」の中身を作り上げる一歩とすべきだろう。
東シナ海でのガス田開発について、その共同開発の対象は、「双方が受け入れ可能な比較的広い海域」とし、協議の加速を確認するにとどまった。中国が今後「互恵」原則を守らなければ、東シナ海を「平和・協力・友好の海」にすることなどできない。防衛交流についても合意したが、中国は今年初め、弾道ミサイルによる衛星破壊実験を強行し、軍事力増強路線をひた走っているという現実がある。国連改革に関して中国側は、「日本が国際社会で一層大きな建設的役割を果たすことを望んでいる」と表明した。だが、中国は日本の国連安保理常任理事国入りに強烈な反対運動を展開してきた。中国は、国際政治の場で日本の発言力が強まることを本当に受け入れるだろうか。
日本にとって重要な課題は、北朝鮮の核開発阻止と拉致問題の包括解決だ。6か国協議の議長国である中国との緊密な連携が大事だ。温首相は、「日本国民の人道主義的関心に対して理解と同情」を示し、拉致問題の早期解決を希望するとともに、必要な協力を提供したいと表明した。この問題の日中協力は、互恵関係の具体化の試金石になるはずだ。
戦略的互恵関係は、昨秋、安倍首相と胡錦濤国家主席が合意したように「両国関係の発展に影響を与える問題を適切に処理し、政治と経済という二つの車輪を力強く作動」させることによって初めて実を結ぶ。「友好」から「戦略的互恵」という新次元の関係を確立するためには、政治的懸案解決が急務だ。安倍首相の年内訪中や胡主席の来日など首脳対話を通じて前進を図らなければならない。
12日;日経社説(全)温首相来日を機に日中「氷解」へ動け
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/index20070411MS3M1100311042007.html
『日中両国は昨秋の安倍訪中で「戦略的互恵関係」を目指すことで合意しており、今回はその具体策と肉付けが主要テーマとなった。互恵協力では環境保護と省エネ対策を柱に金融、IT(情報技術)、知的財産権の保護などを申し合わせた。地球温暖化対策は、12年に排出削減の第一約束期間が終わる京都議定書の次をにらんだ新しい枠組みづくりに焦点が移っている。中国がポスト京都議定書の国際交渉に参加する姿勢を明確にしたことは評価できる。
両首相は懸案の東シナ海ガス田開発問題で東シナ海を「平和、協力、友好の海とすることを堅持する」と表明、共同開発の協議加速で一致したものの、新たな進展はない。この問題は日中間のトゲになっており、日本側はかねて日中中間線付近での「白樺」(中国名・春暁)ガス田の開発中止を中国政府に申し入れている。だが、今月6日の北京での技術者専門家会合で中国側はガス田の構造や埋蔵量の新たなデータ提供を拒んだという。
両首相は6カ国協議での対話を通じて北朝鮮の核問題を連携して解決していくことを確認した。温首相は日本人拉致問題の解決に向け「必要な協力を提供したい」と申し出た。
今回の会談をテコに日中の防衛交流に弾みがつき、曹剛川国防相の今秋訪日が決まった。中国海軍の艦船の日本初寄港、海上自衛隊艦艇の訪中も実現しそうだ。だが、07年度の国防予算は前年度実績比17.8%増と公表額で日本の防衛費を初めて上回り、19年連続で二ケタの伸びとなった。衛星破壊実験や空母建造計画など「中国脅威論」につながりかねない動きも相次いだ。
日本側には2年前の春に中国各地で吹き荒れた反日デモの記憶が残っていることもあって、国民の対中感情は必ずしも好転していない。「戦略的互恵」を単に言葉だけに終わらせず、実りあるものにするにはまず信頼関係の醸成が必要だ。温首相は12日、中国の首相として初めて国会で演説し、生の声で語りかける。13日には大阪や京都に足を延ばし、経済人や大学生らと交流する。今回の訪日を契機に日中の“氷解”にさらに努めてほしい。
12日;毎日社説(2)日中関係 首脳交流を定着させよう
『両首脳が発表した共同記者発表によると、懸案の東シナ海のガス田開発問題では具体的な進展はなかったが、双方が受け入れ可能な比較的広い海域で共同開発を行うことで一致。国連改革では「中国側は日本が国際社会で一層大きな建設的役割を果たすことを望んでいる」とし、拉致問題については中国は「必要な協力を提供したい」と記すのにとどまった。友好ムードを演出するため協力しやすい分野を取り出し懸案事項を先送りした印象が強いが、日中関係の新段階への第一歩としてはやむをえないだろう。
今年は日中戦争の勃発から70年に当たる。温首相が歴史認識の問題で「善処が必要だ」と指摘し、安倍首相が「平和国家として歩むのが私の認識そのものだ」と答えたのも、この問題がなお両国民の間に摩擦を生じさせかねないデリケートな問題であることを示している。中国は安倍首相の靖国参拝を警戒しているが、安倍首相は参拝するかどうかは明言しない姿勢を貫いている。共同文書の作成が最終段階まで難航したことにも、双方の疑心暗鬼があらわれている。
日中関係の動向は米国も注視している。良好な日中関係は米国の利益とも合致する。今月下旬、首相就任後初めて米国を訪問する安倍首相にとって、中国との関係改善を図ることは訪米の成果にもつながるはずだ。戦略的互恵関係とは、利害が対立する問題についても長期的、未来志向の視点から率直に話し合える関係を言うのだろう。ようやく再開した首脳相互訪問を双方の努力で定着させてほしい。
12日;朝日社説(1)日中会談―相互訪問を定着させよ http://www.asahi.com/paper/editorial.html
『「新たな高みへと発展させていきたい」と安倍首相が言えば、温家宝首相も「安定的な軌道に乗せる必要がある」と応じる。温首相は歴史問題でクギをさすことも忘れなかった。「今年は日中戦争70周年にあたる。歴史問題を善処することが非常に重要だ」。一方、安倍首相は日本の国連安保理常任理事国入りへの支持を求めたが、明確な回答はなかった。 両国の間にはなお、重要な問題をめぐっての懸念や見解の相違があることを忘れてはならない。それでも、互いの利益が一致するテーマを数多く並べ、それをめぐる共同作業を通じて日中関係を発展させていくことで合意したことの意味は大きい。
省エネなどエネルギー分野と環境保護の分野で協力を強化するための二つの共同声明もできた。温室効果ガスの排出規制をめぐって、京都議定書のあとの枠組みづくりに中国が積極的に参加するとの表明もあった。日本側に不信感が強い中国の軍事については、中国国防相の訪日や艦艇の相互訪問など防衛交流を深めることが合意された。透明性を高め、相互不信を除いていくために、欠かせない措置だ。これを手はじめに、さらに交流を広げていくことが急がれる。 歴史認識の問題をいつまでも避けて通るわけにいかない。時間はかかるかもしれないが、共同の歴史研究や若者交流などを通じて相互理解を深め、信頼を築いていくことが必要だ。 双方の政治家が互いにナショナリズムをあおる愚は繰り返すべきではない。 再出発の土台はできつつある。着実に首脳往来を積み重ねていくことだ。日本側が要請した胡錦濤国家主席の訪日も、ぜひ実現させてもらいたい。
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